スカッシュ エバンジェリストこと、わたくし成田 治樹が今回お伝えしたいのは
【スカッシュ界の瞬獄殺】最強の決め技 "ニックショット" とは
です。
どんなスポーツでも「100%得点が取れる」という必殺技はなかなか存在しないかと思います。
例えば
・野球 : 170km近い剛速球でも、100%打者は抑えられない。
・テニス : 250km近いサーブでも、100%エースを決めれるわけでもない。
・サッカー : ロベカル (古い笑) の弾丸FKでも、100%ゴールは決められない。
・卓球 : どんな魔球サーブでも、100%は決められない。
ただし、我がスカッシュ界には、スカッシュコート固有の特質から
「これが (完璧に) 打てれば、相手から100%得点が取れる」
という最強の必殺技が存在します。
(もちろん難易度も最高レベル)
それが「ニックショット」です。
例えば、自分が世界ランク1位とゲームをしたとします。
仮に自分が試合中に、この「ニックショット」を完璧に打てれば、
例え相手が世界ランク1位でも、100%自分の得点になります。
そう、それはまさにストⅡの裏キャラ "真・豪鬼" の「瞬獄殺」のようです。
(これが言いたかったので、もう満足です笑)
では、なぜ「100%決まる」と断言できるのか、解説していきます!
「ニックショット」とは
まず英語で「Nick (ニック)」とは「切り目・刻み目」を意味しますが、
スカッシュコート内でも「ニック」と呼ばれる場所が存在します。
それがここです。
赤線の箇所がちょうど壁と床の繋ぎ目の部分なのですが、ここを「ニック」と呼び、
前壁からの跳ね返りを、このニックに入れることを「ニックショット」と言います。
そして、ニックに入ったボールは完全に死にます。
つまり、ニックに入ったボールは全く弾まずにコロコロと転がってくるだけなので、
物理的に2バウンド未満で返せず「100%」決まるのです。
まさに一撃必殺の瞬獄殺です・・
ただし、もちろん「針の穴を通す」正確性が必要になるので、
このニックショットは非常に難易度が高く、
上級者でも完璧に決める事が出来るのは稀です。
ただし、世界のトッププロの試合になるとまた話は違ってきます。
1ゲーム中に複数本決めるのは当たり前で、1試合中に10本以上決める強者もいます。
実際に動画を観てもらうのが早いかと思うので、
「スカッシュエバンジェリスト的 おすすめニックショット集」を御紹介します!
世界最高の実例集
ニックショットだけを集めた (紹介したくなる) 良い感じの動画が無かったので、
こちらの動画からニックショットの実例を御紹介したいと思います。
これは (コロナの影響でスカッシュ界も甚大な被害を受けた) 2020年シーズンの
世界のトッププロの「ベストショット候補集」(男子)なのですが、
この中に幾つも素晴らしいニックショットが見受けられますので御紹介します。
Squash: Men's Shot of the Year - 2020 Contenders
<ニックショット 登場シーン (少しだけマニアックな) 解説>
1番目 : Mostafa Asal (エジプト / 世界ランク12位)
最強国エジプトの次世代を担うライジングスター。(まだ19歳)
いとも簡単にバックハンドで決めているように見えるのが本当に凄い・・
ちなみに、Mostafa Asalは以前の過去記事でも触れた事が有りました。
6番目 (3:24~) : Tom Richards (イギリス / 世界ランク33位)
長年安定した活躍を続ける、スカッシュの祖国イギリスのベテラン。
1ゲーム目の最終盤、ゲームボールを握られた緊迫の場面でサーブレシーブから必殺の一撃・・・
そりゃ観客も驚きます笑
10番目 (5:43~) : Mostafa Asal (エジプト / 世界ランク12位)
再び登場。
若さと勢いがほとばしる超豪快なニックショットです。
11番目 (6:04~) : Gregoire Marche (フランス / 世界ランク15位)
スカッシュ強国であるフランスのプレイヤーの中で、
現在最も高い世界ランクに位置しています。
ニュージーランドが誇るスター Paul Coll との長いラリーから、
最後には後ろ斜めにジャンプしながら華麗なニックショットを決めています。
ちなみに現在世界ランク72位につけ、日本人男子最高位を更新し続けている
日本チャンピオン 小林僚生選手 ですが、現在フランスを拠点に研鑽を重ねているようで、
最近彼の公式YouTubeチャンネルで、このGregory Marche選手との練習試合の模様が公開されていました。
試合内容・動画品質共に素晴らしいので、ご興味有る方は是非ご覧になって下さい。
【スカッシュ - ガチ練習試合③】日本チャンピオン小林僚生(世界80位) vs. フランス代表グレゴワー・マーシェ(世界17位)
13番目 (8:06~) : Youssef Ibrahim (エジプト / 世界ランク34位)
昨年11月に行われた Qatal Classic という大きな大会で、
長年世界のトップに君臨している、現世界ランク2位の Mohamed Elshorbagy を破り
突如頭角を現したエジプトの若き次世代レフティー。
ファイナルセットの拮抗した中盤に、バックハンド後方から完璧なニックショットを決めています。
(この場面で相手の Elshorbagy がショットに対して賛辞を送っているのは、さすがです)
最後 (11:33~) : Mazen Hesham (エジプト / 世界ランク14位)
出ました、間違いなく世界最高のテクニシャンで、自分もめちゃくちゃ好きな選手です。
大トリを飾るのに相応しい "有り得ない" 角度からのニックショットをご覧ください。
このカメラアングル含めて美し過ぎますね・・
打ち方
無いです笑
もちろん、色々なアドバイスは出来ますし、練習方法も有りますが、
最終的には、修行僧のように「1人打ち」で鍛錬し、
ニックに入れる感覚を地道に研ぎ澄ましていく他に、道は有りません。
それくらい難しいですが、何せ完璧に打てれば「100%決まる」ので、
ロマンの有るショットですし、何より決まった時の爽快感といったら格別です。
(自分も現役時代ニックショットばっか練習してました)
個人的には、完璧なニックショットには「芸術加算点」のような形で
「+1点」上乗せしても良いのではないかと思いますが、どうでしょうか?
最後に
さて、いかがでしたでしょうか?
これまでもスカッシュ固有の技術・事象・ルールというのは幾つかご紹介してきましたが、
まだまだ存在しますので、今後もバシバシご紹介していく所存です。
お楽しみに!
NRT