スカッシュ エバンジェリストこと、ワタクシ成田 治樹が今回お伝えしたいのは
スカッシュで飯を食う方法 (前編)
という事です。
自分がスカッシュを始めた頃 (2003年) に比べて、最近はジュニア選手といって小・中学生でスカッシュを始め、選手権大会等でバリバリ活躍するケースが本当に増えてきました。
親御さんが自分の子供にスカッシュを習わせているモチベーションは様々だと思いますが、
「仮に我が子に特別な才能が有っても、スカッシュをずっと続けたところで、それで生計を立てられるわけじゃないし」
みたいな事が理由で、もし「スカッシュ界の錦織圭 or 大阪なおみ」になれる逸材が親の理解・サポートを受けられずに途中でスカッシュを諦めざるを得ない状況になったとしたら、スカッシュ エバンジェリストとしては夜も眠れないですね。(ホントかよ)
という事で、今回は
1. 自分の子供にスカッシュを習わせており、我が子に特別な才能を感じている親御さん
2. これから自分の子供にスカッシュを勧めてみようかと画策している親御さん
向けに、スカッシュで飯を食う (生計を立てる) 方法を2つご紹介し、
それぞれどのくらい稼げるのかを紐解いていきます。
方法1 : 世界のトッププレイヤーになる
いきなりの超ハードモードで恐縮です・・・
ただ、大変残念ながら国内でトッププレイヤーになっても一番大きな賞金大会が
「賞金総額100万円」
という規模で、かつそれも年に数回しか有りませんので、国内で大会賞金+スポンサー収入等だけで生計を立てることは出来ないのが現状です。
一方で、世界に目を向けると状況は変わってきます。
日本にいるとなかなか想像できませんが、そもそもスカッシュは「186か国」で親しまれており、競技人口は「約2,000万人」と言われているほど ”地球規模で盛んなスポーツ" なのです。(海外のホテルとかによくスカッシュコート有りますよね)
世界各地でPSA (Professional Squash Association : プロスカッシュ協会) によるプロツアーが毎週行われており、そのレベルも
- PSA World Tour (高)
- PSA Challenge Tour (中)
- PSA Satellite Tour (低)
と3段階設定されているほどです。
世界のトッププロはどれだけ稼いでいるのか?
では、世界でプロツアーを回れるくらいの選手になれば、それだけで飯を食えるようになるのか?
実はそんな甘い世界ではないようです。
2013年と結構古いですが、面白い記事を見つけましたので幾つかポイントを羅列してみます。
・スカッシュだけで生活できるのは、世界でもトップ20のみ
・世界のプロ選手の収入源は主に
-1 : 獲得賞金
-2 : スポンサー収入
-3 : ナショナル協会からの補助金
-4 : エキシビションマッチ出場料
-5 : コーチング収入
・2013年6月時点で、世界ランク2位だったGregory Gaultier (France)の内訳は
-1 : 獲得賞金 35%
-2 : スポンサー収入 40%
-3 : フランス協会からの補助金 5%
-4 + 5 : エキシビションマッチ出場料 + コーチング収入 15%
-6 : その他 5%
となっており、フランス協会からの補助金が年間100~150万円 という事で、
年収は推定で「2,000万円~3,000万円」
・2013年6月時点で、1年間ほぼ負けなしと無敵だったRamy Ashour (Egypt)は
年間の獲得賞金だけで推定「2,400万円」
同額程度のスポンサー収入等が上乗せされていると推定されるので、
Ramyの年収は推定で「4,800万円」で、当時の最高給選手
という事で、「方法 1 : 世界のトッププレイヤーになる」と書いたのは、
世界でも上位20名程度しか、プロ選手として飯を食っていけない (らしい) からなのです。
しかも世界最高給選手でも推定年収「4,800万円」と、トップ選手が年間数十億円稼ぐテニスのようなメジャースポーツと比べると、かなり見劣りしてしまう感は正直否めませんが、それでも「飯を食う」という観点では十分過ぎる収入ですよね。
【脱線】Gaultier vs Ramyによる伝説的なラリー
さて、ここで一旦思いっきり脱線しますが、GaultierとRamyという自分が愛してやまない2人の選手の名前が出てきましたので (特にRamyが一番好きな選手です)、もうスカッシュ エバンジェリストとしては我慢できませんね。
「ToC (Tournament of Champions)」という、毎年1月に何とニューヨークのグランドセントラル駅の中に設置される特設コートで開催される世界トップレベルの大会が有るのですが、2013年のToCでGaultierとRamyが対戦した際に繰り出された、ある1つの伝説的なラリーの映像をご紹介します。
2人とも超人的な反応速度・ラケットワーク・ショット精度を見せており、歴史上でも世界最高のラリーの一つだと確信しています。
またラリー後の2人のリアクションも好きです笑
世界の賞金総額は年々上がっている!
満足したので、本題に戻りますね。
先程割と悲観的なニュアンスで世界のトッププロの現状をご紹介しましたが、当時の記事は2013年当時のもので、もうそこから6年経っています。
では、最新状況はどのようになっているのか?
実は世界のプロツアーの賞金総額は、大幅に上がってきています。(特に女子!)
これも最新とは言えませんが、一つ参考になる2018年の記事を見つけましたので、
またポイントを羅列してみます。
・2017/2018シーズンの男女合計 全大会賞金総額は「約7億円」
これは前年対比で「11%増」
内訳としては、
女子ツアー賞金総額 「約2.86億円」 (前年対比 31%増)
男子ツアー賞金総額 「約4.14億円」(前年対比 ヨコヨコ)
・最も稼いだ女性選手の賞金総額は「約2,400万円」(=推定年収4,800万円)
2015年対比で93%増
・最も稼いだ男性選手の賞金総額は「約3,000万円」(=推定年収6,000万円)
2015年対比で72%増
(前述したRamyの2013年賞金総額は当時ずば抜けたものだったと思われます)
・ランク上位25位選手の賞金総額平均は、同じ2015年対比で
女性選手 : 63%増
男性選手 : 37%増
といった感じで、年々男女の賞金総額の差が縮まってきており、
まさに世界のスカッシュ界に女子旋風が吹き荒れています。
これは世界のスカッシュ界の裾野を広げるという意味では本当に良い傾向ですね。
近い内に男女で賞金総額が同額になる日も来るのではないでしょうか。
っていうか、2013年当時無敵だったRamyの賞金総額と同じ額を、
今は女子のトップ選手が稼いでいるというのは本当にビックリしました。
それだけ世界では男女問わず、スカッシュで「しっかりと」飯を食える土壌が整ってきている、という事だと思います。
今シーズンは更に凄いことに!
さてご紹介したのは昨シーズン (17/18年) の話だったんですが、
実は今シーズン (18/19) は更に凄いことになっていて、プロツアーの歴史を塗り替える凄い大会が行われました。
それは今年2月にシカゴのユニオン駅構内に設置された特設コートで行われた
「2018-2019 PSA World Championships」で、
なんと、その賞金総額は歴史上初めて1億円を越えて1.1億円!!(男女 5,500万円ずつ)
という、まさにオバケみたいな大会が行われたのです。
これは本当にすごい事で、今までどんなに大きな大会でも、
大体男女共に賞金総額「2,000万円ずつ」というのがMAXでしたから、
まさにスカッシュ界のエポックメイキング的な大会になったのは間違いありません。
今後も (日本を含む) 世界のスカッシュジュニア、そしてその親御さんに夢と希望を持たせるべく、こういった賞金総額1億円越えの大会がバンバン出てきてもらいたいものです。
だいぶ1つ目の方法だけで長くなってしまったので、
2つ目の方法は後編でご紹介したいと思います。
NRT