スカッシュ エバンジェリストこと、わたくし成田 治樹が今回お伝えしたいのは
スカッシュで飯を食う2つの方法 (後編)
です。
前編で最初の方法 (超ハードモード) をご紹介しましたが、
今回はもう一つの方法をご紹介します。
それは
方法 2 : プロコーチになる
です。
この方法だと国内でもスカッシュで生計を立てる事が可能で、
仮に自分の子供が「スカッシュに恋をしてしまった」のでれば、
その「好き」をそのまま仕事にすることができ、
また他の人にも連鎖させる事ができる素敵な職業と言えるでしょう。
もちろん、スカッシュ界にとって無くてはならない人たちです。
具体的に紐解いていきます。
プロコーチとは?
国内にスカッシュレッスンを専門に請け負っている会社が幾つか有りますので、そこに所属し、コーチとして生計を立てている人を指します。
自分の知ってる限りでは、どこにも所属せずフリーとして生計を立てているプロコーチはいません。
日本スカッシュ協会で資格制度を設けていますが、特に「これを取っていないとプロコーチとして認められない」という事では有りません。
(そういえば自分の師匠もプロコーチでしたが、特に資格は持ってませんでしたね笑)
ただ実際にはコーチとしてのクオリティを高める意味で、またはコーチとして箔をつける意味でも、資格を取得されているケースが多いです。
どうやったらなれるのか?
当たり前ですが、スカッシュが上手くないとなれません笑
(メンタルトレーナーではないので、理論だけではコーチにはなれません)
選手としての実績を積み、スカッシュレッスンを専門に請け負う、以下のような会社に所属する事が必要になります。
・Squash Magic
・Team Watanabe
・ブラックナイト
・First Wave
では、コーチになる前にどれくらいのレベルの選手になる事が求められるのか?
これも明確な定義は無いですが、コーチとして生計を立てていくなら、最低でも
「全日本選手権 出場」
レベルでないと、個人的に「プロ」と名乗るには心許ないと思います。
スカッシュにおける「全日本選手権」とは、
出場資格が無いと出られない、文字通り日本一を決める大会で、
スカッシュを始めて大会に出ているような選手であれば、誰もが一度は出てみたい大会です。
よく上手い人を「あの人は全日本選手だからねー」と形容したりします。
色々と資格は規定されているのですが、
- ジャパンランキング 上位40位
- 認定大会(例 : 東京都選手権・関東選手権など) 上位入賞
- 全日本学生選手権 ベスト8
- 各ジュニア大会 (全日本アンダー23など) 上位入賞
等々の高いハードルをクリアして、ようやく資格を得る事が出来ます。
ちなみにこの「全日本選手権」ですが、昨年は準決勝以降初めて「トレッサ横浜」というショッピングモールの中に特設コートを設置し、実施されました。
海外の大会みたいですね、ほんと。
今年も是非チャレンジして欲しいです。
(*追記 : 今年もトレッサ横浜で実施予定です!)
では、「全日本選手権」に出れるくらいの選手であればプロコーチになれるのか?
というと、必ずしもそういうわけではなく、一般社会と同じく
「高いコミュニケーション能力」
が求められます。
例えば「世界ランキングで50位以内に入った」といった国内スカッシュ界において
誰も真似できないような圧倒的なキャリアが有ったら、
それはもうスカッシュ界においてカリスマになっているでしょうから、
多少ぶっきらぼうでも
「このスカッシュ界における有名人から習いたいの!」
という生徒さんが寄ってきて、プロコーチとしてやっていけそうな気がしますが、
仮に「全日本選手権 出場」レベルでプロコーチになる場合、
経歴的には全く珍しいキャリアでは無いので、結局はコミュニケーション能力が重要になってくるのは間違いありません。
自分が知っているプロコーチの方々も、長く続けてらっしゃる方は総じてコミュニケーション能力が高い方ばかりです。
では、プロコーチに求められる「コミュニケーション能力」とは具体的にはどういったことを指すのか?
自分のコーチ経験、また様々なプロコーチを見てきた観点から、個人的には以下の2点を挙げたいと思います。
1. 愛想の良さ (生徒にいじられる)
2. 遠慮の無さ (生徒をいじれる)
ちょっと解説しますね。
<1. 愛想の良さ (生徒にいじられる)>
生徒さんは結構年配の方、しかも女性の方が多いのが現状です。
そういった方々からすると、例えば20代のコーチだったりすると、自分の子供くらいの年齢になりますので、いかに愛想良く振舞い ”可愛がってもらえるか” が割と本気で重要になってきます。
「自分はコーチだから」という態度を前面に出してしまうと、人生の先輩である生徒さんにそっぽを向かれてしまうのです。
<2. 遠慮の無さ (生徒をいじれる)>
とはいえ、可愛がってもらったり、いじられたりするだけではプロコーチとして頼りなくってしまいます。
長く続いているコーチほど生徒さんの「いじり方」が上手く、距離感の取り方が上手いなと感じる場面が多いですね。
以上をまとめると、プロコーチになる、なるだけでなく成功(=長続き)するには、
1.「選手としての実績」(最低でも全日本出場)
2.「高いコミュニケーション能力」(愛想の良さと、遠慮の無さ)
が必要となってきます。
どれくらい稼げるのか?
自分も何人かプロコーチの知り合いはいますが、さすがに面と向かって年収は聞いた事が有りません。。。
また検索してもスカッシュ コーチの年収は出てこないので、参考までにテニスコーチ の年収情報を貼っておきます。
*追記
実際にプロコーチの方より、”もっとスカッシュコーチの平均年収は高い!”と 御指摘頂きました。
もちろんWEB上の情報が正しいとは限りませんが、決して給与水準が高い方とは言えないでしょう。
ただ最初に述べた通り、
- 「好き」を仕事にできる
- そして、その「好き」を連鎖させることができる
という意味で非常にやりがいを感じる事が出来る職業だと思いますので、後は職業選択の際に何を重視するか、という個々の価値観次第かと思います。
将来性は?
正直、職業としてのプロコーチをあまり楽観視はできません。
なぜなら、職場であるスカッシュコートが徐々に減っているからです。
自分が知ってる限りで以下の通り並べてみますが、これはほんの一例で、
まだまだ他にも縮小しているケースが有るのではないかと思います
- ルネサンス北千住 : 2007年閉店 (閉店前は3面存在) *2017年再オープンもスカッシュコートは無し
- セントラル錦糸町 : 2013年閉店 (閉店前は2面存在)
- ルネサンス千歳船橋 : 2014年閉店 (閉店前は3面存在)
- セントラル自由が丘 : 2018年「2面」から「1面」に縮小
- セントラル溝の口 : 2017年「3面」から「2面」に縮小
- メガロス武蔵小金井 : 「2面」から「1面」に縮小
背景として良く言われるのが、スポーツクラブ側からみた「採算性の悪さ」です。
スカッシュ レッスンは最大でも一度に「6名」しか受講できず、
またそのレッスンも常に満員御礼かと言われると決してそうではありません。
加えて、レッスンが無い時のスカッシュコートがガラガラに空いていたりすると、
クラブ側から見た際に「このスペースを遊ばせておくのは勿体ないな」という判断になってしまうケースが有ります。
例えばヨガスタジオなどであれば一度に数十名動員することができ、
また現在ホットヨガ等が非常に女性に人気ですので、集客力も見込めます。
そういったスタジオと比べられてしまうと、スカッシュに分が悪くなってしまいます。。。
ただ、そういったネガティブな状況の中で前述した「Team Watanabe」や「First Wave」は自前でスカッシュ専門施設を作り、自分達で何とか現状を打破していこうと努めています。
(スカッシュ専門施設に関しての記事はこちら)
こうした動きがもっと全国規模で拡がっていくか否かが、プロコーチの将来性を左右する事になると思われます。
最後に
以上、前編・後編と分けて「スカッシュで飯を食う方法」を2つご紹介しました。
まだ日本人で世界のトッププレイヤーと言える選手は出てきておらず、
前編でご紹介した方法で生計を立てている人はいません。
そういった意味で、スカッシュ界の更なる発展のために
「スカッシュ界の錦織圭・大阪なおみ」の出現が待たれるところですが、
現状世界の壁は非常に分厚く感じます。
特に「ある意外な国」が世界のスカッシュ界を席巻し続けていますので、
そのスカッシュ王国に関しても別の機会で取り上げてみる予定です。
NRT